積算・工程管理実践ガイド 投稿日:

土木積算が合わないのはなぜ?予定価格とズレる原因と対処法

土木積算が合わないのはなぜ?予定価格とズレる原因と対処法

開札結果と自社の積算を見比べて、「なぜこんなに差が出たのか」と首をひねった経験はないでしょうか。積算が合わない原因を単価の見直しだけに求めても、なかなか差は縮まりません。積算が合わない背景には、単価・歩掛・経費・端数処理といった複数の要因が絡み合っており、しかもその多くが発注者ごとの運用差に根ざしているためです。

公共工事の入札は、ごくわずかな差で落札の順位が入れ替わる世界です。予定価格をどれだけ正確に推定できるかが、そのまま受注機会に直結します。だからこそ、「なんとなく合わない」を放置せず、どこで差が生まれているのかを特定できる状態にしておくことが重要です。

本記事では、土木積算が予定価格と合わない原因を7つに整理したうえで、開札後に金入り設計書を入手して差異を切り分ける「積算検証」の進め方まで解説します。

 

☁️

土木工事積算システム『Gaia Cloud』で積算業務をもっと効率化

土木工事積算の実際の操作をデモ動画でご紹介

デモ動画を見る →

 

【目次】

1. 積算が「合わない」とはどういう状態か
 1-1. 予定価格・最低制限価格と応札額の関係
 1-2. わずかな差で落札を逃す入札の実情
 1-3. 原因の多くは「発注者ごとの運用差」に行き着く

2. 単価・歩掛で積算が合わない4つの原因
 2-1. 単価の適用年月・単価地区の取り違え
 2-2. 物価資料の採用優先順位が発注者で異なる
 2-3. 見積単価・特別調査単価は事前に把握できない
 2-4. 歩掛・施工パッケージの選択誤りと補正条件の見落とし

3. 経費・端数処理・数量で積算が合わない3つの原因
 3-1. 経費条件(工種区分・施工地域・各種補正)の設定違い
 3-2. 端数処理を行う段階と方法の違い
 3-3. 発注者提示数量の転記・解釈のズレ(土量変化率・一式の内訳)

4. 合わない原因を特定する積算検証|金入り設計書との差異分析
 4-1. 金入り設計書の入手方法(各自治体の情報提供制度)
 4-2. 差異は単価→歩掛→経費→端数の順に切り分ける
 4-3. 検証結果を発注者ごとのクセとして蓄積する

5. 積算精度を高めるための実務対処
 5-1. 発注者の積算基準・単価資料を最新に保つ
 5-2. 積算システムで発注者ごとの条件差に対応する

6. 土木積算と予定価格のズレに関するよくある質問(FAQ)

7. まとめ

 

積算が「合わない」とはどういう状態か

公共工事の入札では、発注者があらかじめ予定価格(及び最低制限価格)を積算し、受注者はそれを推定しながら応札額を決めます。「積算が合わない」とは、この推定額と実際の予定価格に差がある状態を指します。まずは、この差が入札の結果にどう響くのかを整理します。

予定価格・最低制限価格と応札額の関係

公共工事では、発注者の積算した予定価格が契約金額の上限となり、多くの発注者ではダンピング受注を防ぐための最低制限価格や低入札価格調査基準価格が設定されます。応札額がこの範囲に収まらなければ、金額の多寡以前に受注の土俵に立てません。

最低制限価格は予定価格の内訳から一定の算式で導かれるため、予定価格の推定がずれれば、狙うべき価格帯そのものがずれてしまいます。受注者の積算は、金抜き設計書に示された工種・細別・数量を前提に、発注者と同じ基準・単価にそろえて予定価格を推定する業務と言ってよいでしょう。

わずかな差で落札を逃す入札の実情

最低制限価格の近くには各社の応札が集中しやすく、ごくわずかな差で順位が入れ替わることも珍しくありません。同額での抽選(くじ引き)となるケースもあります。積算の推定がずれていれば、最低制限価格を下回って失格になるか(低入札価格調査の案件では調査対象となるか)、逆に安全側に寄りすぎて競争に勝てないか、どちらかに振れてしまいます。積算の精度が、そのまま受注機会を左右する構図です。

なお、予定価格が事前公表される案件では、公表された金額から内訳を推定するアプローチもあります。この手法は「入札価格シミュレーションの裏技「逆計算」。実は奥が深いって本当?」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

原因の多くは「発注者ごとの運用差」に行き着く

土木工事の積算は国土交通省の土木工事標準積算基準書が土台になっていますが、実際の運用は発注者ごとに少しずつ異なります。採用する単価資料、経費の計算条件、端数処理の方法──同じ設計書でも、どの発注者の運用で計算するかによって答えが変わります。

つまり「積算が合わない」の多くは、積算基準の理解不足というより、その発注者の運用に自社の積算を合わせ切れていないことが原因です。この視点を持つと、これから見ていく7つの原因の切り分けが進めやすくなります。

 

単価・歩掛で積算が合わない4つの原因

直接工事費を構成する単価と歩掛は、差が生まれる最初のポイントです。ここでは4つの原因に分けて見ていきます。

単価の適用年月・単価地区の取り違え

材料単価・労務単価・機械損料は、適用年月と単価地区によって金額が異なります。同じ材料でも、どの時点の単価を採用するか、どの地区区分で見るかで差が出ます。単価は年度当初だけでなく年度の途中で改定されることもあり、「前回と同じ単価でよいだろう」という判断が差の原因になりがちです。

燃料や鋼材のように変動の激しい単価は、物価資料の号数が1つ違うだけで金額が変わります。単価改定をまたぐ時期の案件では、設計書の適用年月を確認し、新旧どちらの単価で積算されているかを押さえておきたいところです。

物価資料の採用優先順位が発注者で異なる

単価の根拠となる資料には、発注者の公表単価、市販の物価資料(「建設物価」「積算資料」)、見積単価などがあり、どの資料をどの順番で優先するかは発注者によって異なります。両方の物価資料に載っている材料でも、2誌の平均をとる(2誌平均)のか、安いほうを採る(2誌安値)のかは発注者の運用しだいで、この採用ルールの違いだけで単価に差が生まれます。

発注者の公表単価に載っていない材料をどの資料で補うか、という順序も発注者ごとの運用です。自社がいつも使っている資料と、その発注者が採用している資料が同じとは限りません。どの資料が採用されているかは、後述する金入り設計書を突き合わせると具体的に確認できます。

見積単価・特別調査単価は事前に把握できない

物価資料にも載っていない材料や工法について、発注者は複数の業者から見積を取り寄せて単価を決定します(見積単価)。取得金額の大きい材料を対象に、特別調査によって単価を決める仕組みを設けている発注者もあります。また、単価だけでなく歩掛そのものを見積で決定するケースもあります。

こうした単価は受注者が事前に知ることができず、仮に同じ業者から見積を取れたとしても、発注者に提出された金額と同じとは限りません。単価表をいくら見直しても差の原因が見つからないときは、この見積単価が差を生んでいる可能性を疑ってみてください。

歩掛・施工パッケージの選択誤りと補正条件の見落とし

歩掛は工種名だけでは決まりません。土質や施工規模、作業時間帯といった施工条件によって、適用する歩掛や補正が変わります。似た名称の歩掛の取り違え、補正条件の見落とし、旧年度基準の使用は、差の定番と言える原因です。適用に迷ったときは、基準書の適用条件に立ち返り、設計書に示された施工条件と一つずつ照らし合わせることが結局は近道となります。

また、直接工事費を機械・労務・材料込みの標準単価で積算する施工パッケージ型積算方式では、地区や時点に応じた単価の補正計算が組み込まれており、条件の入れ方ひとつで結果が変わります。よくあるミスの類型は「もう失敗しない!! 「よくある積算ミス」を振り返る」でも取り上げていますので、参考にしてください。

 

経費・端数処理・数量で積算が合わない3つの原因

直接工事費は合っているのに総額が合わない──そんなときの原因は、経費・端数処理・数量の扱いに潜んでいることが多いものです。

経費条件(工種区分・施工地域・各種補正)の設定違い

共通仮設費・現場管理費・一般管理費等は、工種区分、工事規模、施工地域、各種補正条件によって率が変わります。経費対象額の考え方──たとえば処分費をどう控除するか──も発注者ごとに確認が必要なポイントです。近年は週休2日補正や熱中症対策費など、経費まわりの確認事項も増えています。

経費は工事費に占める割合が大きく、条件を1つ誤るだけで総額が大きく動きます。たとえば処分費を控除せずに共通仮設費の対象額に含めてしまえば、率計算の土台から違ってきます。直接工事費の規模が大きい案件ほど、率のわずかな条件差が金額の差として増幅されることに注意が必要です。一般管理費の仕組みは「土木工事の一般管理費とは?積算で失敗しない正しい理解と計算方法」で詳しく解説しています。

端数処理を行う段階と方法の違い

単価計算のとき、明細ごと、工種ごと、経費計算のあと──どの段階でどう丸めるかによって、最終金額は変わります。切り捨てか四捨五入か、どの位で丸めるかの組み合わせまで含めると、同じ計算式でも結果は1通りではありません。1つひとつは小さな差でも、明細数の多い工事では積み重なって無視できない額になります。また、国土交通省や自治体の積算基準では、工事価格が所定の単位に収まるよう一般管理費等で調整する取扱いが定められており(参考:工事費積算における数値の取扱い例|国土交通省)、この丸めの扱いも発注者ごとの確認ポイントです。

「計算式は合っているはずなのに、なぜか金額が合わない」というときは、計算の中身より先に、端数処理の段階と方法を疑ってみてください。

発注者提示数量の転記・解釈のズレ(土量変化率・一式の内訳)

公共土木工事では、発注者から数量が提示されるため、受注者が数量そのものをゼロから計算し直す場面は多くありません。提示の様式は発注者によって異なり、金抜き設計書に数量が記載されている場合もあれば、国土交通省の工事のように別紙の「見積参考資料」で数量が示される場合もあります。

ただし、数量を計算し直さないからといって、数量まわりのミスが起きないわけではありません。発注者が示した数量を自社の積算へ転記する際の誤り、訂正版や質問回答書で変わった数量の反映漏れ、数量欄や単位の読み取りミス、「一式」で計上された項目の内訳の解釈違い──こうしたところが差異の原因になります。

とくに土量の変化率は、読み違えると運搬や盛土の金額に大きく響きます。数量計算の考え方は「若手技術者必見!失敗しない数量計算から積算の秘訣」もあわせてご覧ください。

 

合わない原因を特定する積算検証|金入り設計書との差異分析

ここまで7つの原因を見てきましたが、これらは代表的なものにすぎず、実際の現場では、これらに当てはまらない原因も無数にあります。発注者ごとの運用差は細部まで挙げればきりがなく、どの原因で差が出ているのかを推測だけで特定するのは困難です。確実なのは、発注者の金入り設計書を入手し、自社の積算と突き合わせて差異を特定する「積算検証」です。

金入り設計書の入手方法(各自治体の情報提供制度)

金入り設計書は、単価・金額まで記載された発注者側の設計書です。従来は情報公開請求により入手するのが一般的でしたが、近年は手続きを簡素化した「情報提供」の制度として運用する自治体が増えており、電子データで交付する発注者や、インターネット上で閲覧できる発注者もあります(例:工事設計書の情報提供|東京都建設局)。

提供の時期は契約締結後とするのが一般的ですが、対象案件の範囲や申込方法も含めて発注者ごとに異なるため、まずは主要な発注者の契約担当部署の案内を確認してみてください。自社が応札した案件は、落札できたかどうかにかかわらず入手して検証に回すことをおすすめします。落札を逃した案件こそ、差の原因が詰まった教材になるからです。

差異は単価→歩掛→経費→端数の順に切り分ける

突き合わせは、総額の差から入って原因を絞り込みます。まず工種別に差額を並べ、差の大きい工種から代価単位で比較します。

数量が一致していれば、差は単価(代価)側にあります。代価の単価が違っていれば、材料・労務・機械などの構成単価による差か(適用年月・単価地区・採用資料・見積単価のどれか)、それとも歩掛の選択や補正条件による差かを切り分けます。直接工事費が一致しているのに総額が合わなければ、経費条件の設定違いです。そこまで確認しても残るわずかな差は、端数処理の段階と方法によるものと見当が付きます。

単価→歩掛→経費→端数。この順序で切り分けていけば、原因を特定できないまま終わることはほとんどありません。1件の検証にかける時間も、慣れれば大きな負担にはならないはずです。なお、この検証には自社の積算を代価レベルまで残しておくことが前提になります。応札時の積算データは、事後の検証まで含めてワンセットと考えて保存しておきましょう。

検証結果を発注者ごとのクセとして蓄積する

検証で分かったことは、発注者別に記録して次の積算に生かします。採用している物価資料の優先順位、経費の計算条件、丸めの方法、見積単価が使われやすい材料や工法──こうした「発注者のクセ」は、一度つかめば繰り返し使える財産です。記録といっても大がかりな仕組みは要りません。発注者ごとに1枚のメモを作り、検証のたびに書き足していく程度で十分に機能します。

積算担当が1人という会社は少なくありません。だからこそ、頭の中のノウハウを発注者別のメモに落としておく意味があります。自分自身の次回の積算が速く正確になるのはもちろん、将来だれかに業務を引き継ぐときの資産にもなります。

 

積算精度を高めるための実務対処

積算検証で発注者のクセをつかむこととあわせて、日々の積算の土台を整えておくことが精度向上の近道です。

発注者の積算基準・単価資料を最新に保つ

積算基準書や単価表の改定情報は、発注者のホームページなどで公表されます。よく応札する発注者については、基準・単価の改定を定期的に確認し、手元の資料を最新の状態に保ちましょう。改定をまたぐ時期の案件では、どの時点の基準・単価が適用されるかの確認を習慣にしたいところです。確認した改定情報を前述の発注者別メモに書き足しておけば、次の案件でそのまま使えます。

積算の基本的な進め方から精度を高めるコツまでは「土木積算の基本|やり方・資格・精度を高めるテクニックを実務目線で解説【受注者編】」にまとめていますので、あわせてご覧ください。

積算システムで発注者ごとの条件差に対応する

単価の改定、発注者ごとの経費条件、端数処理の設定──これらを手作業だけで追い続けるのは、積算担当が1人の体制では大きな負荷です。土木工事積算システム『Gaia Cloud』(ガイアクラウド)のように、最新の単価データや発注者ごとの積算条件を反映できるシステムを活用する方法もあります。

ただし、システムを使えば自動的に予定価格と一致するわけではありません。金入り設計書との検証で発注者のクセを確かめる習慣と組み合わせてこそ、精度は着実に上がっていきます。

 

土木積算と予定価格のズレに関するよくある質問(FAQ)

Q. 金入り設計書は、落札していない案件でも入手できますか?

A. 多くの発注者では、契約締結後であれば応札の有無や落札の可否にかかわらず入手できます。情報公開請求による発注者と、簡素化された情報提供制度で対応する発注者があり、電子データ交付やインターネット閲覧に対応している場合もあります。対象案件の範囲や手数料は発注者ごとに異なるため、契約担当部署の案内で確認してください。

Q. 予定価格が事前公表される案件でも、積算は必要ですか?

A. 必要です。予定価格が分かっても、最低制限価格や低入札価格調査基準価格は内訳の構成によって変わるため、狙う価格帯を絞り込むには内訳まで再現する積算が欠かせません。応札額の決め方は「土木積算における入札戦略と実践テクニック」で詳しく解説しています。

Q. 積算検証は、どのくらいの頻度で行えばよいですか?

A. 応札した案件ごとに行うのが理想ですが、まずはよく応札する主要な発注者の案件から始めるのが現実的です。同じ発注者で数件検証すると、採用資料や経費条件、丸めの方法といった運用の傾向がつかめてきます。傾向がつかめた発注者は頻度を下げ、初めて応札する発注者を優先する形で回すとよいでしょう。

Q. 見積単価が使われているかどうかは、どうすれば分かりますか?

A. 発注者の公表単価にも物価資料にも見当たらない材料や工法は、見積単価が使われている可能性が高いと考えられます。確実に判別するには、金入り設計書の該当明細の単価が手元の資料のどれとも一致しないことを確認します。該当した材料は発注者別のメモに記録しておくと、次回の積算で注意すべき項目として生かせます。

 

まとめ

土木積算が予定価格と合わない原因は、単価の適用年月・単価地区、物価資料の採用優先順位、見積単価・特別調査単価、歩掛の選択と補正条件、経費条件、端数処理、数量の転記・解釈──この7つに整理できます。そして、その多くは発注者ごとの運用差に行き着きます。

原因を推測で潰そうとするのではなく、金入り設計書を入手して差異を単価→歩掛→経費→端数の順に切り分ければ、自社の積算のどこを直せばよいかが具体的に見えてきます。検証の積み重ねが、そのまま発注者ごとのクセの蓄積になります。

まずは、直近に応札した案件の金入り設計書を入手して、自社の積算との差異を確かめるところから始めてみてはいかがでしょうか。

ご購入前の
お問い合わせ

ご購入前の製品に関するご質問や資料請求・見積り依頼などは、下記のいずれかにお問い合わせください。

059-227-2932059-227-2932 9:00~18:00(土日祝除く) 内容の正確な把握とサービス品質向上のため、通話を録音させていただいております。

ご購入後の
サポート

ご購入後のサポートに関するお問い合わせは、下記フォームもしくはお電話よりお問い合わせください。

0120-24-98010120-24-9801 Gaia, BeingBudget, BeingBid
9:00~18:00(土日祝除く)
059-221-0815059-221-0815 左記以外の商品上記以外の商品
9:00~18:00(土日祝除く)
内容の正確な把握とサービス品質向上のため、通話を録音させていただいております。