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遠隔臨場のやり方|施工計画書の記載から当日の段取りまで解説

遠隔臨場のやり方|施工計画書の記載から当日の段取りまで解説

特記仕様書に遠隔臨場の適用が示されていた、あるいは監督職員から打診された──そこまでは分かっても、実際に何をどう準備すればよいのかは、要領を読んだだけでは見えにくいものです。

国土交通省が令和4年度から本格実施に移して以降、都道府県や公的機関にも要領の整備が広がりました。ただ、ウェアラブルカメラとWeb会議システムを用意すれば自動的に回るかというと、そうではありません。映像が揺れて確認箇所が映らない、説明が聞き取れない、電波が切れて中断する──こうしたつまずきは、機器の性能ではなく段取りの問題であることがほとんどです。

そしてもう一つ見落とされやすいのが、遠隔臨場は施工計画書への記載と監督職員の確認を経て初めて動き出すという点です。

本記事では、遠隔臨場のやり方を、着工前の準備から施工計画書の記載、当日の段取り、うまくいかないときの対処、記録の扱いまで、受注者の実務の順に整理します。

 

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【目次】

1. 遠隔臨場を始める前に決めておく3つのこと
 1-1. 遠隔で行う確認行為と現場臨場で残す確認行為を仕分ける
 1-2. 使用する機器と仕様を決める
 1-3. 現場の通信環境を実地で確かめる

2. 施工計画書に何を書くか|記載事項と事前協議の進め方
 2-1. 実施要領が求める3つの記載事項
 2-2. 発注機関ごとに違う「適用の入口」
 2-3. 依頼から実施までのルールを最初に握る

3. 当日の段取り|「伝わる映像」にするための実務
 3-1. 撮影役と説明役を分ける
 3-2. 黒板表示と読み上げは冒頭と終了時に
 3-3. 引きで場所を示し、寄りで数値を読む

4. うまくいかないときの対処|通信断・判断不能・やり直し
 4-1. 通信が途切れたら記録を残して机上確認に切り替える
 4-2. 映像で判断できないときは現場臨場に戻す
 4-3. やってはいけないこと

5. 記録と提出まで一気通貫にする|情報共有システムの使い方
 5-1. 映像の記録・保存は受注者の役割ではない
 5-2. 実施内容と日時の登録を求められる場合がある
 5-3. 遠隔書類検査まで見据えた書類の残し方

6. 遠隔臨場のやり方に関するよくある質問(FAQ)

7. まとめ

 

遠隔臨場を始める前に決めておく3つのこと

遠隔臨場の成否は、着工前にどこまで詰めておけるかで決まります。決めておくべきことは、確認行為の仕分け、使用機器、通信環境の3つです。

遠隔で行う確認行為と現場臨場で残す確認行為を仕分ける

国土交通省の「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」(令和5年3月版)が対象としているのは、土木工事共通仕様書に定める「段階確認」「材料確認」「立会」です。ただし、通信環境が整わない現場や、遠隔で行うとかえって非効率になる項目は対象から外すこととされています。

要領の別表では、確認対象となる工種・確認項目が、汎用的な機器で実施できるものと、特殊な機器を要するか現場臨場が必要なものとに区分されています。この別表と自社の工事の確認予定を突き合わせ、どの確認行為を遠隔で行うのかを一覧にしておきます。

ここで全項目を遠隔に寄せようとしないことがコツです。仕分けを先に済ませておけば、当日になって「これは映像では分からない」と押し返されることが減ります。

使用する機器と仕様を決める

実施要領(案)の参考仕様は、動画撮影用カメラが映像で画素数640×480以上・フレームレート15fps以上、音声はモノラル(1チャンネル)以上。Web会議システムは通信回線速度が下り最大50Mbps・上り最大5Mbps以上、映像・音声の転送レートが平均1Mbps以上とされています。

数字だけ見ると、高価な専用機材が必須というわけではありません。それでもウェアラブルカメラが多く使われているのは、画質の要求が高いからではなく、両手が空いた状態で測定や指示ができるからです。スケールを当てながら、あるいは黒板を持ちながらの確認では、手持ちの端末だと人手が一人分余計に必要になります。

音声も選定の判断軸です。重機が稼働している脇では風切り音や機械音で声が通らないことがあるため、マイク付きヘッドセットを併用するかどうかもこの段階で決めておきます。

現場の通信環境を実地で確かめる

仕様を満たす機器をそろえても、現場に電波が届かなければ成立しません。山間部やトンネル坑内など、公共土木の現場には携帯回線が届きにくい場所が少なくありません。

確かめておきたいのは、現場事務所ではなく実際に確認行為を行う場所の通信状況です。施工の進捗に応じて撮影位置は移動するため、着工前に主要な作業箇所を回り、確認予定の時間帯に映像を送っておきます。通信が確保できない箇所は現場臨場で残す側に回し、施工計画書の記載に反映します。

 

施工計画書に何を書くか|記載事項と事前協議の進め方

遠隔臨場は、施工計画書に書いて監督職員の確認を受けたところから実際に動き出します。着工前の段取りを書面に落とす工程と言ってよいでしょう。

実施要領が求める3つの記載事項

実施要領(案)では、受注者は「適用種別」「使用機器と仕様」「段階確認等の実施」を施工計画書に記載し、監督職員の確認を受けなければならないとされています。

適用種別は、段階確認・材料確認・立会のどれに遠隔臨場を適用するかです。ここに前節で仕分けた一覧を落とし込みます。使用機器と仕様は、カメラとWeb会議システムの機種名と、参考仕様を満たすことが分かる数値を書きます。実施方法には当日の体制や連絡手順を書いておきます。書面で合意しておけば、現場代理人や監督職員が代わっても同じやり方で続けられます。

発注機関ごとに違う「適用の入口」

土台となるのは国土交通省の要領ですが、実際に適用されるのは発注機関ごとの要領です。東京都建設局は令和7年4月の「建設現場における遠隔臨場実施要領(案)」、埼玉県県土整備部・都市整備部は令和6年4月、水資源機構は令和7年9月と、整備の時期も内容も機関ごとに異なります。

とくに違いが出るのが、適用をどう決めるかという入口の部分です。東京都建設局の要領では、起工前の工事は特記仕様書で適用を明示し、起工後は受発注者間の協議によって決める形が採られています。入口が特記仕様書なら記載内容に従えばよく、協議なら受注者側から申し出る余地があります。

依頼から実施までのルールを最初に握る

流れそのものは従来の立会と変わりません。段階確認・立会依頼書を提出し、実施の時間・場所・必要な資料を監督職員に確認したうえで当日を迎えます。ただ、監督職員の移動時間がなくなるぶん日程調整の自由度は上がります。依頼から実施までの日数や急な変更時の連絡手順を事前協議で決めておくと、工程の組み方に余裕が出てきます。

あわせて確認しておきたいのが、資料提出への対応です。実施要領(案)では、監督職員等は確認に必要な資料等の提出を請求できるものとされ、受注者はこれに協力しなければならないとされています。図面や品質管理資料をすぐ画面で示せる状態にしておくことも準備のうちです。

 

当日の段取り|「伝わる映像」にするための実務

監督職員は限られた画角と音声だけで契約図書との適合を判断します。現場臨場であれば自分で見渡して把握できることも、映像では画角の外にある情報が伝わりません。こちらから「何を確認しているか」を示す必要があります。

撮影役と説明役を分ける

当日に最も効いてくるのが役割分担です。撮影する人と説明する人を分けておくと、映像が安定し、説明も落ち着きます。一人で撮影と測定と説明を兼ねると、画面が揺れて肝心の部分が映らないまま時間だけが過ぎます。

確認行為に何人を張り付けるかは労務費にも響くため、実行予算の段階で織り込んでおきたいところです(参考:「建設業の労務費管理|実行予算の組み方と月次管理のポイントを解説」)。とはいえ、監督職員の到着を待って全員の手が止まっていたことを思えば、確認行為の時間帯だけ二人を充てるほうが結果的に早く終わります。

なお、映像には作業員が映り込みます。実施要領(案)では被撮影者への説明と承諾の取得が求められているため、朝礼の場で共有しておくと当日が動かしやすくなります。

黒板表示と読み上げは冒頭と終了時に

実施要領(案)は、工事名、工種、確認内容、設計値、測定値、使用材料等を黒板等で表示し、冒頭で読み上げること、終了時には確認箇所の内容を読み上げることを求めています。

黒板は遠隔臨場では想像以上に重要になります。画面越しでは文字が潰れやすいため、いつもより大きめの文字で書き、カメラに正対させてから読み上げる。逆光になる向きを避ける──こうした配慮の積み重ねが、確認の一発通過につながります。

読み上げの省略も避けたいところです。黒板が映っていても、通信状況によっては相手側で文字が判読できていないことがあります。なお、要領の表現は「黒板等」であり、映像画面内に黒板情報を重ねて表示できるシステムもあります。手書きの手間が省け、文字の視認性も上がりますが、発注者によって扱いが異なる可能性があるため、事前協議で確認しておくと確実です。

引きで場所を示し、寄りで数値を読む

映す順序をあらかじめ決めておくと、確認がすんなり進みます。まず引きの映像で施工箇所全体と周囲の位置関係を示し、そのうえでスケールの目盛りが読める距離まで寄る、という順序です。

寄りの映像から始めると、監督職員は「これはどこを映しているのか」から確認しなければならず、余計なやり取りが増えます。逆に引きだけで終われば数値が読めません。引き、寄り、読み上げ。この3点をセットにして確認項目ごとに繰り返し、複数箇所を続けて確認する場合は、次の箇所に着いてから改めて引きの映像を映し直します。

 

うまくいかないときの対処|通信断・判断不能・やり直し

遠隔臨場では、準備を尽くしても当日に想定外が起きます。実施要領(案)はそうした場面の手順も定めており、あらかじめ知っておけば慌てずに済みます。

通信が途切れたら記録を残して机上確認に切り替える

電波状況によって遠隔臨場が中断した場合、確認箇所を画像や映像で記録し、メール等で共有したうえで机上で確認することも可能とされています。途切れた時点で振り出しに戻るのではなく、記録を残して切り替える手順が用意されているということです。

そのためには、中断してから慌てて撮り直すのではなく、確認行為の最中に静止画も並行して残しておくことです。撮影役が動画を配信し、説明役が要所で静止画を撮る。この分担なら、通信が切れてもその時点までの記録が残ります。

映像で判断できないときは現場臨場に戻す

実施要領(案)では、映像や音声が不十分で、機器の調整によっても改善が難しい場合は、監督職員の判断で現場臨場に切り替えることとされています。

受注者側から見て「これは映像では伝わらない」と感じたときも、その場で監督職員に伝えて相談するのが早道です。無理に押し通して後日やり直しになるほうが工程への影響は大きくなります。現場臨場への切り替えは失敗ではなく、要領が想定している運用の一部です。切り替えが起きた項目は記録しておき、次回以降は最初から現場臨場で予定を組みます。

やってはいけないこと

実施要領(案)には、故意に不良箇所を撮影しないといった行為に対して監督処分が実施される場合があると明記されています。画角は受注者が握っているため、意図的に映さないことが技術的には可能であり、だからこそ明記されているのでしょう。

意図的でなくとも、結果として不都合な箇所が映っていない状態は避けたいところです。確認箇所の周囲を一度ぐるりと映してから寄る習慣をつけておけば、こうした疑いが生じる余地はなくなります。伝わらない映像は撮り直す。この姿勢が手戻りを減らします。

 

記録と提出まで一気通貫にする|情報共有システムの使い方

遠隔臨場は、映像を送って終わりではありません。記録の扱いを最初に整理しておくと、日々の書類業務と一体で運用できます。

映像の記録・保存は受注者の役割ではない

まず押さえておきたいのは、映像そのものの記録・保存が受注者の役割ではないという点です。実施要領(案)では、確認実施者が現場技術員の場合、現場技術員が自身のPC等で映像を画面キャプチャ等により記録し、情報共有システム等で監督職員へ提出するとされています。受注者は映像と音声を配信するのみで、録画やデータの保存は不要です。確認のたびに動画ファイルを保存して容量の管理に悩む必要はありません。

実施内容と日時の登録を求められる場合がある

一方で、発注機関によっては受注者側に記録の登録を求めています。東京都建設局の要領では「受注者等は、遠隔臨場を実施した内容と日時を記録し、工事情報共有システムに登録して保管する」とされています。映像の保存ではなく、いつ何を確認したかという実施履歴の記録です。

どちらの扱いになるかは要領によって異なるため、施工計画書を作る段階で確認しておきます。いずれにせよ、Web会議は別の仕組み、記録の登録は情報共有システム、写真の整理はまた別、と窓口が分かれていると、登録漏れや重複が起きやすくなります。逆に確認が早く終われば立会待ちで作業を止める時間も短くなり、手待ちが生じやすい協力会社の作業にも響きます(参考:「建設業の外注費管理|膨らむ原因と予算を守る実務手順を解説」)。

遠隔書類検査まで見据えた書類の残し方

令和6年3月には工事検査を対象とした「遠隔臨場による工事検査に関する実施要領(案)」が整備され、完成検査や既済部分検査にも遠隔臨場が広がりました。このうち遠隔書類検査は、対象書類を電子化することを原則とし、情報共有システム(ASP)等で共有したうえでWeb会議システムで画面を共有しながら進めるものとされています。

つまり、日々の書類が電子で整理されていなければ、検査だけ遠隔にすることはできません。検査の直前にまとめてスキャンするやり方では、ファイル名やフォルダ構成が場当たりになり、画面共有で目的の書類にたどり着けません。発議・決裁の都度、電子で残していく運用が近道です。とくに設計変更が生じた工事は変更協議の経緯を示す書類が増えるため、時系列でたどれる状態にしておきたいところです(参考:「設計変更時の実行予算の見直し方|修正手順と原価管理のポイントを解説」)。

システムを見るときの確認点は三つです。よく応札する発注機関で使えるか、遠隔臨場のWeb会議と記録の登録が同じ仕組みで完結するか、工事完了後の電子納品まで通しで扱えるか。ASP型の工事情報共有システムには、遠隔臨場に対応した機能を備えたものがあります。『BeingCollaboration』(ビーイングコラボレーション)の遠隔臨場支援機能のように、映像画面内への電子小黒板の表示、画面キャプチャの保存・管理、録画データと段階確認書等の帳票の連動までを同じ環境で扱えるシステムを活用する方法もあります。

 

遠隔臨場のやり方に関するよくある質問(FAQ)

Q. 遠隔臨場の適用は、受注者側から提案できますか?

A. 発注機関の要領によります。起工前の工事は特記仕様書で適用を示し、起工後は協議で決める運用を採る発注者もあります。協議方式なら受注者から申し出る余地があるため、要領と特記仕様書を確認したうえで、施工計画書の作成前に監督職員へ相談するのが実際的です。

Q. スマートフォンやタブレットのカメラでも実施できますか?

A. 参考仕様は画素数640×480以上・フレームレート15fps以上のため、仕様の面では多くの端末が満たします。ただし片手がふさがるので測定や黒板表示に人手が必要になり、長時間の確認ではバッテリーも課題です。両手が空くウェアラブルカメラが選ばれるのはこの理由によります。

Q. 遠隔臨場を実施した日は、従来の段階確認書などの書類は不要になりますか?

A. 不要にはなりません。実施要領(案)では、確認結果の資料管理は従来の段階確認等資料と同様の扱いとされています。臨場の方法が変わるだけで、確認そのものの位置づけや書類の体系は従来どおりと考えてください。

Q. 情報共有システムは、どれを使ってもよいのですか?

A. 発注機関が指定・推奨するシステムがある場合があるため、まずは特記仕様書や要領を確認してください。国土交通省の「工事施工中における受発注者間の情報共有システム機能要件」への対応が確認されているシステムであれば、想定されている運用に沿って使えます。

 

まとめ

遠隔臨場のやり方は、着工前・当日・記録の3段階で整理できます。着工前に確認行為を仕分け、機器を決め、通信環境を実地で確かめる。それを施工計画書に記載して監督職員の確認を受ける。当日は撮影役と説明役を分け、黒板表示と読み上げを冒頭と終了時に行い、引きで場所を示してから寄りで数値を読む。

うまくいかないときの手順も要領に用意されています。通信が途切れたら記録を残して机上確認に切り替え、映像で判断できないときは現場臨場に戻す。どちらも失敗ではなく想定内の運用です。記録については、映像の保存は受注者の役割ではない一方、実施内容と日時の登録を求める発注者もあるため、事前協議で扱いを確認しておきます。

要領は発注機関ごとに異なります。まずは次の工事の特記仕様書と発注機関の要領を突き合わせ、どの確認行為を遠隔で行うかを一覧にするところから始めてみてはいかがでしょうか。

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