積算・工程管理実践ガイド 投稿日:

資材高騰で実行予算が崩れる原因と、利益を守る原価管理のポイント

資材高騰で実行予算が崩れる原因と、利益を守る原価管理のポイント

鋼材、生コン、燃料といった主要資材の値上がりが、土木工事の利益を直接圧迫しています。さらに、労務費も中長期で上昇基調が続き、原価への影響は資材だけにとどまりません。受注時に組んだ実行予算が、いざ着工する頃には資材単価が変わってしまい、採算が合わなくなる──そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

建設物価調査会が公表する「建設資材物価指数」や、国土交通省の「主要建設資材需給・価格動向調査」を見ても、ここ数年の建設資材は高い水準で推移しています。特に鉄筋・形鋼などの鋼材、セメント・生コン、軽油などの燃料費の上昇は、土木工事の原価を継続的に押し上げる要因になってきました。

この記事では、土木部長や現場代理人など、実行予算を組んで現場の利益を守る立場の方を対象に、資材高騰のなかで実行予算をどう守るかを整理します。発注者に依存する「スライド条項」については別の機会に説明したいと思います。今回は、 派手な手法に頼らず、原価管理の王道を着実に回すことが、結局のところ利益を守る最短ルートだという立場で書いています。

 

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【目次】

1. 資材高騰で実行予算が崩れる仕組み
 1-1. 受注から購買までの「時間差」が原価を狂わせる
 1-2. 主要資材ごとに動き方が違う(鋼材・生コン・燃料)

2. 実行予算の単価を「最新の見込み単価」で組み直す
 2-1. 入札時の積算単価をそのまま実行予算にしない
 2-2. 単価の根拠を予算書に残す

3. 主要資材は早期発注で単価を押さえる
 3-1. 発注タイミングは施工計画から逆算する
 3-2. 早期発注のデメリットも見ておく

4. 月次の予実管理で実行予算のズレを早く拾う
 4-1. 残工事の見通しも合わせて更新する
 4-2. 差異は「金額」だけでなく「原因」を費目別に分解する
 4-3. 改正建設業法の請負代金変更協議と「労務費の基準」を知っておく

5. 過去工事の費目別実績が、次の実行予算の精度を決める
 5-1. 費目別の実績を残し、次の実行予算で活かす
 5-2. 積算と実行予算をつなげて単価更新を効率化する

6. まとめ

 

 

資材高騰で実行予算が崩れる仕組み

まず、なぜ資材が値上がりすると実行予算が崩れるのか、その仕組みを押さえておきます。

受注から購買までの「時間差」が原価を狂わせる

実行予算が資材高騰で崩れる最大の理由は、受注時点と購買時点との「時間差」にあります。

公共土木工事の場合、入札時の積算で請負金額が固まり、実際の施工は数か月から数年後というケースが少なくありません。その間に資材単価が動くと、入札の積算で前提にした数量×単価のロジックが崩れます。実行予算上は利益が出る計算でも、いざ買う段階で粗利が縮んだり、赤字に転じたりすることが起こるわけです。

しかも、受注競争が厳しい現場ほど、見積もり段階で予備費を厚く積むことが難しくなります。価格変動の余地を十分に持てないまま受注し、後から値上がりに直撃される──こうした構造は、資材高騰局面で特に表面化しやすいパターンです。

主要資材ごとに動き方が違う(鋼材・生コン・燃料)

「資材高騰」とひとくくりに語られることが多いですが、品目ごとに値段の動き方は大きく異なります。

鉄筋や形鋼などの鋼材は、原料の鉄スクラップや原油・原料炭の国際相場、為替の動向に強く左右されます。世界の景況感や地政学的なイベントの影響を直接受けるため、短期間に大きく動くことが特徴です。

セメント・生コンは、2023年以降、大手メーカーが複数回にわたって価格改定を行い、地域による単価差も広がっています。同じ案件規模でも、地域や時期によって調達コストの差が拡大している点に注意が必要です。

軽油などの燃料費は、原油価格と税制の動向で短期に動きやすく、機械損料や運搬費を通じて間接的に原価へ波及します。

実行予算を「資材」とひとくくりにせず、影響の大きい主要品目ごとに動きを掴むことが、価格変動への備えの第一歩になります。

 

実行予算の単価を「最新の見込み単価」で組み直す

積算をベースに実行予算を作成する場合、資材の 高騰局面では、その「ベース」をそのまま流用するだけでは危険です。

なお、原価を押し上げているのは資材だけではありません。公共工事設計労務単価は2026年3月適用の改定で全国全職種平均が前年比+4.5%となり、14年連続の引き上げが続いています。鋼材や燃料のような短期の急変動とは違い、労務費は中長期で着実に上がっていく性格のコストです。資材と労務費を同じ目線で見ておくことが、実行予算の前提を守る出発点になります。

入札時の積算単価をそのまま実行予算にしない

入札時の積算は、原則としてその時点で得られる最新の単価で組まれます。しかし、実際に発注や購買を行うのは、その数か月から数年先です。

実行予算を組む際には、入札の積算単価をそのまま転記するのではなく、「いま購入するとしたらいくらか」という見込み単価で組み直す必要があります。特に主要資材については、改めてサプライヤーから内示単価を取得したり、社内に蓄積した直近案件の購入実績を参照したりして、実勢に近い単価を採用しましょう。

入札時単価と見込み単価の差が大きい場合、その差をどう扱うかは案件ごとの判断になります。差を予算に飲み込めるのか、それとも工法見直しや早期発注で吸収するのか。実行予算を組む段階で、社内でその意思決定をしておくことが重要です。

単価の根拠を予算書に残す

実行予算に採用した単価には、必ず根拠を残しておきます。「サプライヤーの内示単価(〇月時点)」「直近案件の購入実績」「公共工事設計労務単価(適用年度)」など、出所を予算書に併記しておく形が一般的です。

根拠を残しておくと、後から振り返ったときに判断の理由が確認できますし、想定外の値上がりが発生した際にも、変動分を切り出して説明できます。改正建設業法のもとでは、見積りや実行予算の「根拠」を説明できることの重要性が高まっています。社内の予算承認フローでも、単価の根拠まで確認するルールにしておくと、属人化した判断による抜け漏れを防げます。

 

主要資材は早期発注で単価を押さえる

実行予算の前提を守るためには、組み方の工夫だけでなく、買い方の工夫も組み合わせます。資材高騰の局面で多くの会社が取り組んでいるのが、主要資材の早期発注です。

発注タイミングは施工計画から逆算する

早期発注とは、施工で使用する時期よりも前に、価格上昇前のタイミングで必要数量を押さえる買い方を指します。値上がりが見込まれる局面では、施工計画を後ろから逆算して、「いつまでに発注を確定させれば工程に間に合うか」「サプライヤー側の納期はどれくらいか」を確認したうえで、適切な発注時期を決めます。

サプライヤーとの交渉では、一定期間の単価固定を取り付けたり、数量割引を引き出したりすることで、実行予算上の単価のブレを抑えることもできます。価格スライドを織り込んだ契約形態を取り交わすケースもあり、契約条件と実行予算をセットで設計する視点が求められます。

なお、すべての資材を早期に押さえる必要はありません。価格変動の幅が大きい鋼材や、調達リードタイムが長い特殊資材を優先し、生コンのように長期保管が難しい資材は施工時期に合わせた発注計画を維持するなど、品目ごとに切り分けて判断するのが現実的です。

早期発注のデメリットも見ておく

ただし、早期発注はメリットばかりではありません。実務的にはトレードオフがあり、無条件に進めるべき手法ではないという点に注意が必要です。主なデメリットは3つあります。

第1に、保管場所の確保です。早期に資材を受け入れれば、その分の置き場所が現場や置き場で必要になります。特に都市部の現場や狭隘な敷地では、保管スペースの確保自体が課題になることがあります。

第2に、保管中の品質劣化のリスクです。鉄筋の発錆、保管中の汚損や紛失など、長期保管に起因する品質・数量の問題が発生する可能性があります。資材ごとに保管できる期間や条件を踏まえた発注計画にする必要があります。

第3に、資金繰りへの負担です。早期に支払いが発生する分、運転資金の圧迫につながります。実行予算の利益を守る目的で早期発注したつもりが、会社全体のキャッシュフローを悪化させてしまっては本末転倒です。

早期発注は、主要資材に絞って、保管・品質・資金繰りの3点を社内で確認したうえで進めるのが現実的なアプローチです。

 

月次の予実管理で実行予算のズレを早く拾う

実行予算は、組んだ瞬間がゴールではありません。資材高騰の局面では、組んだ後の運用で利益が決まると言ってよいでしょう。月次で予実を突き合わせ、ズレを早く拾う仕組みが特に効いてきます。

残工事の見通しも合わせて更新する

月次の予実管理で押さえておきたいのは、「実行予算」「実績原価」「残工事の見通し」の3つを同時に突き合わせることです。

当月の実績だけを見て一喜一憂しても、工期末にどう着地するかは見えてきません。残工事の単価前提を、最新の購入予定単価で置き直し、工期末の着地利益を毎月見直す。この運用に切り替えると、利益が落ちる前兆を早い段階で察知できるようになります。

差異が一定のラインを超えたときに、現場と社内(経理や経営層)で対応を協議するルートを決めておくと、判断が早くなります。会社の規模によって関わる顔ぶれは変わりますが、「誰に上げて、誰が判断するか」を事前に決めておくことが肝心です。「ズレに気づいたが、誰に上げればいいか分からず手遅れになった」という事態を防ぐためにも、相談先と判断者を事前に決めておきましょう

差異は「金額」だけでなく「原因」を費目別に分解する

予実差異を見るとき、金額の大小だけで判断するのは危険です。同じ500万円の超過でも、原因が単価上昇なのか、数量増なのか、輸送費の上振れなのか、労務費の上昇なのかで、打てる手は変わってきます。

差異の原因を費目別・要因別に切り分けて記録しておくと、次工事の積算精度を上げる材料にもなります。資材高騰局面で増えがちなのは、資材の単価要因(鋼材や生コンの値上がり)、輸送費要因(燃料費を通じた間接的な影響)、機械損料要因(軽油の上昇)、そして労務費要因(外注費・常用費の上昇)の4つです。特に労務費は、公共工事設計労務単価が14年連続で上昇しているように、中長期で原価を押し上げ続ける費目です。月次の予実シートに「単価差」「数量差」「労務差」「その他要因」の列を追加するだけでも、要因分解は始められます。

改正建設業法の請負代金変更協議と「労務費の基準」を知っておく

2024年9月から3段階で施行された改正建設業法(令和6年法律第49号)では、資材価格が著しく変動した場合に、受注者から発注者へ請負代金等の変更協議を申し出る仕組みが整備されました。請負代金の変更に関する規定は2024年12月に施行され、改正法は2025年12月に全面施行されています。

これにより、発注者側には誠実に協議に応じる責務があります。月次の予実管理で資材高騰の影響が一定額・一定割合を超えた案件については、変更協議を申し出ることも選択肢の一つです。

ただし、協議を実効的なものとするには、客観性のある資料を揃えておくことが前提となります。国交省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」では、変更協議において発注者が「考慮して協議を行うことが求められる」資料として、公的主体などにより作成・更新された一定の客観性を有する統計資料(建設物価指数、積算資料などの物価指数)が、また「考慮して協議を行うことが望ましい」資料として、資材業者の記者発表や、下請・資材業者から提出された見積書など現時点と過去時点の資材価格を比較した資料が挙げられています。

実務に落とすと、見積時単価と実際の購入単価を比較できる原価データ、サプライヤーからの見積書や価格改定通知、物価指数の3点セットを揃えておくことが、協議のテーブルで主張を通す最低条件になります。日々の原価管理の精度がそのまま協議の準備度に直結するため、制度を「使える状態」にしておくことと、実行予算の運用は表裏一体だと言えます。

なお、同じ改正建設業法では、「労務費に関する基準(標準労務費)」も導入されました。中央建設業審議会が作成・勧告する基準で、これを著しく下回る労務費による見積りや契約は不適切な行為として扱われます。資材価格と同じく、労務費もまた改正法の枠組みで「適正な水準を確保すべきコスト」として位置づけられたことになります。実行予算を組む段階から、労務費を資材費と同じ目線で押さえておくことが、これからの原価管理のスタンダードになっていきます。

改正建設業法の影響については「元請けの実行予算、改正建設業法にどう対応する?費目別管理への移行3ステップ」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

 

過去工事の費目別実績が、次の実行予算の精度を決める

資材高騰下で実行予算の精度を上げる根本は、過去工事の実績データをどれだけ自社に蓄積できているかにあります。一案件ごとの工夫ではなく、組織として続けていく取り組みです。

費目別の実績を残し、次の実行予算で活かす

費目ごとの実績単価、予実差、歩掛の実績を、工種・施工時期・地域・規模といった切り口で残しておきます。資材高騰の局面では、「この工種では鋼材の予実差がこの程度発生しやすい」「冬期施工では燃料費が上振れする傾向がある」といった経験値が、次の実行予算の精度を直接押し上げてくれます。

エクセルでの個別ファイル管理だけでは、案件や工種が増えるほどデータが散らかってしまい、担当者ごとにやり方も変わってしまいます。原価管理システムで一元管理する形が、実務的には現実的な選択肢になります。

積算と実行予算をつなげて単価更新を効率化する

積算(入札用見積もり)と実行予算(社内利益管理)を別ツールで管理していると、単価が改定された際の更新作業に手間がかかり、転記ミスや漏れも発生しやすくなります。

土木工事積算システム『Gaia Cloud』(ガイアクラウド)のように、最新の公共工事標準歩掛・単価情報を反映できる積算システムと、見積・実行予算システム『BeingBudget』(ビーイングバジェット)のような実行予算管理を組み合わせると、積算結果から実行予算への展開、月次の予実分析までを一貫した数字で運用できます。

また、工事情報の参照頻度が高い現場であれば、クラウド型工事情報総合マネジメントシステム『INSHARE』(インシェア)で契約・工程・図面・打合せ記録を一か所にまとめておくことで、価格変動が発生したときの判断スピードも上げられます。

なお、システムの導入は手段であり、本来の目的は「資材高騰下でも利益を守る原価管理を実現すること」です。導入を検討する際は、まず自社の実行予算プロセスのどこに課題があるかを整理してから比較するほうが、失敗が少なくなります。

 

まとめ

資材高騰の局面で実行予算が崩れる主な理由は、受注時点と購買時点との時間差にあります。その時間差で生じる価格変動を吸収する仕組みが、原価管理の王道に詰まっています。

本記事で整理した実務のポイントは次の5つです。

  1. 実行予算の単価は、入札時の積算をそのまま使わず、資材・労務費とも最新の見込み単価で組み直す
  2. 主要資材は、保管・品質・資金繰りを確認したうえで、早期発注で単価を押さえる
  3. 月次で「実行予算 × 実績原価 × 残工事の見通し」を突き合わせ、ズレを早く拾う
  4. 差異は費目別・要因別に分解し、改正建設業法の請負代金変更協議も視野に入れる
  5. 過去工事の費目別実績を蓄積し、次の実行予算と入札の精度を高める

特別な手法に頼らなくても、これらを一巡させることで、資材高騰下でも利益を守る土台ができてきます。

まずは直近の完成工事から、費目別の予実差を一案件分棚卸ししてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。差の傾向が見えれば、次工事の実行予算でどの費目を厚く見ておくべきか、判断の材料になります。

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