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遠隔臨場とは?対象範囲・費用計上・工事検査まで受注者向けに解説

遠隔臨場とは?対象範囲・費用計上・工事検査まで受注者向けに解説

公共土木の現場で遠隔臨場という言葉を聞く機会が、この数年で一気に増えました。国土交通省の直轄土木工事では令和4年度から本格実施に移り、令和5年3月版の実施要領(案)では「遠隔臨場の対象工種がある工事は原則、全ての工事に適用」とされています。都道府県や公的機関でも要領の整備が進んでおり、整備済みの発注機関では「やるかどうか」ではなく「どの確認行為でどう実施するか」を考える段階に移りつつあります。

そうなると受注者として気になるのは、自社の工事が対象になるのか、機器代や通信費は誰が負担するのか、といったところではないでしょうか。とくに費用の扱いは、要領を読み込まないと分かりにくい部分です。

本記事では、遠隔臨場の定義から対象となる確認行為の範囲、検査への適用拡大、費用がどう計上されるか、そして発注機関ごとの運用差までを、公共土木の受注者の目線で整理します。

 

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【目次】

1. 遠隔臨場とは|Web会議システム等で段階確認・材料確認・立会を行う仕組み
 1-1. 実施要領が定める遠隔臨場の定義
 1-2. 試行から「原則、全ての工事に適用」までの経緯
 1-3. 遠隔臨場は立会の廃止ではない

2. どこまでが対象になるか|確認行為・工種・工事の範囲
 2-1. 対象となる3つの確認行為
 2-2. 別表の区分の読み方
 2-3. 対象から外れる現場・工種

3. 監督から検査へ|2つの実施要領の関係
 3-1. 監督編と検査編の2系統
 3-2. 遠隔書類検査と遠隔実地検査
 3-3. 検査まで広げるなら書類の電子化が前提になる

4. 費用はどう扱われるか
 4-1. 機器は受注者が手配し、費用は技術管理費に計上される
 4-2. 計上できる費目と、購入した場合の考え方
 4-3. 従来の立会費用は共通仮設費に含まれている

5. 発注機関ごとに異なる運用|自社の主要発注者を押さえる
 5-1. 国土交通省の要領が土台になる
 5-2. 都道府県・公的機関への広がり
 5-3. 発注者ごとに確認しておきたい4点

6. 遠隔臨場に関するよくある質問(FAQ)

7. まとめ

 

遠隔臨場とは|Web会議システム等で段階確認・材料確認・立会を行う仕組み

まずは制度としての位置づけを押さえます。言葉の定義と、ここまでの経緯、そして誤解されやすい点の3つです。

実施要領が定める遠隔臨場の定義

国土交通省の「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」(令和5年3月版)は、遠隔臨場を「動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)によって取得した映像及び音声を利用し、遠隔地からWeb会議システム等を介して『段階確認』、『材料確認』と『立会』を行うこと」と定義しています。

短い定義ですが、押さえどころが3つあります。1つは動画であること。工事写真のような静止画の提出とは別の仕組みです。2つ目はリアルタイムであること。録画を後から見てもらうのではなく、その場で監督職員に確認してもらいます。3つ目は、監督段階の遠隔臨場では対象が3つの確認行為に整理されていること。工事のあらゆる場面が遠隔化される話ではありません。なお工事検査については、後述のとおり別の要領で扱われています。

試行から「原則、全ての工事に適用」までの経緯

国土交通省は令和2年度から直轄土木工事で試行を開始しました。同省の報道発表によれば、試行件数は令和2年度に全国で760件、令和3年度には約1,800件と広がり、令和4年度から本格実施に移っています(参考:建設現場における「遠隔臨場」を本格的に実施します|国土交通省)。

そして令和5年3月版の実施要領(案)では、対象工種がある工事は原則として全ての工事に適用するとされています。新規に発注される工事は、遠隔臨場の実施を特記仕様書に記載する扱いです(通信環境が整わない現場など、明らかに難しい場合は除かれます)。

すでに契約している工事で特記仕様書に記載がない場合、国土交通省の要領では2つの経路が定められています。発注者が対象工事に合致すると判断した工事は、受注者に要請があり、実施可能と回答すれば設計変更により実施されます。合致しないと判断された工事でも、受注者から希望があれば受発注者間で協議し、特段の事情がない限り実施することも可とされています。試行段階の「希望すれば使える仕組み」から、標準的な確認方法の1つへと位置づけが変わったと言ってよいでしょう。

遠隔臨場は立会の廃止ではない

誤解されやすいのですが、遠隔臨場は立会を廃止する仕組みではありません。確認行為そのものは従来どおり行われ、監督職員が現場に足を運ぶか、映像を通して確認するかという実施方法が変わるだけです。

確認結果の資料管理も、従来の段階確認等資料と同様の扱いとされています。段階確認書などの書類が不要になるわけではありません。また、映像や音声が不十分で機器の調整によっても改善が難しい場合は、監督職員の判断で現場臨場に切り替えることとされています。遠隔臨場を適用した工事でも、現場臨場が不要になるわけではないという前提で考えておく必要があります。

 

どこまでが対象になるか|確認行為・工種・工事の範囲

「原則、全ての工事に適用」と聞くと自社の全案件が対象に思えますが、実際には確認行為・工種・現場条件の3段階で範囲が絞られます

対象となる3つの確認行為

監督段階の対象は、土木工事共通仕様書に定める「段階確認」「材料確認」「立会」です。

段階確認は、施工途中の所定の段階で、出来形や施工状況が契約図書に適合しているかを確認する行為です。材料確認は、使用する材料が規格や品質を満たしているかの確認。立会は、施工状況や品質管理の実施状況などに監督職員が立ち会うものです。いずれも工事の進行に伴って繰り返し発生し、そのたびに日程を調整してきた確認行為です。

裏を返せば、これら以外は対象外です。工事打合せをWeb会議で行うことは以前から行われていますが、それは遠隔臨場とは別の話として扱われます。

別表の区分の読み方

実施要領(案)の別表では、確認対象となる工種と確認項目が一覧化され、汎用的な機器で実施できるものと、特殊な機器を要するか現場臨場が必要なものとに区分されています。土工から基礎工、舗装工まで幅広い工種が並びます。

自社がよく施工する工種がどちらの区分に入るかは、一度目を通しておく価値があります。区分が分かっていれば、工事が決まった時点で遠隔臨場の発生見込みがつかめ、機器の手配や体制の検討を前倒しできます。仕分けの進め方は「遠隔臨場のやり方|施工計画書の記載から当日の段取りまで解説」で解説しています。

対象から外れる現場・工種

要領は、通信環境が整わない現場や、遠隔で行うとかえって非効率になる項目は対象から外すこととしています。山間部やトンネル坑内など、携帯回線が届きにくい現場は公共土木では珍しくありません。

また「対象工種がある工事は原則全て」という書き方は、裏返せば対象工種を含まない工事は適用の前提から外れるということでもあります。原則適用といっても、機械的に全案件へ適用されるわけではなく、工事の中身と現場条件で判断される仕組みだと理解しておくとよいでしょう。

 

監督から検査へ|2つの実施要領の関係

遠隔臨場は監督の場面から始まりましたが、令和6年3月に工事検査を対象とした要領が整備され、適用範囲が広がりました。

監督編と検査編の2系統

現在の遠隔臨場は、2つの実施要領で組み立てられています。1つが段階確認・材料確認・立会を対象とする監督編、もう1つが「遠隔臨場による工事検査に関する実施要領(案)」(令和6年3月)です。

検査編が対象としているのは、完成検査、中間技術検査、既済部分検査、完済部分検査です。検査項目としては、工事実施状況、出来形、品質、出来ばえが挙げられています。工事の節目に発生する主要な検査が対象に含まれています。

遠隔書類検査と遠隔実地検査

実施の形態は2つに分かれます。遠隔実地検査は、受注者がウェアラブルカメラや360度カメラ等で取得した映像・音声をWeb会議システム等を介して届け、現地の状態を確認してもらうものです。監督段階の遠隔臨場と考え方は同じです。

もう1つの遠隔書類検査は、対象書類を電子化することを原則とし、情報共有システム(ASP)等で共有したうえで、Web会議システムで画面を共有しながら進めるものとされています。

検査まで広げるなら書類の電子化が前提になる

遠隔実地検査は監督段階の延長で対応できますが、遠隔書類検査はそうはいきません。現場事務所に紙のファイルを並べて検査職員がめくっていく従来のやり方とは前提が違い、電子化されていなければ画面共有そのものが成立しないためです。

検査の直前にまとめてスキャンするやり方では、ファイル名やフォルダ構成が場当たりになり、画面共有で目的の書類にたどり着けません。発議・決裁の都度、電子で残していく運用が近道です。とくに設計変更が生じた工事は変更協議の経緯を示す書類が増えるため、時系列でたどれる状態にしておきたいところです(参考:「設計変更時の実行予算の見直し方|修正手順と原価管理のポイントを解説」)。

 

費用はどう扱われるか

受注者にとって最も気になるのが費用の扱いではないでしょうか。国土交通省の要領では、機器の手配・設置は受注者が行いますが、遠隔臨場により追加で必要となる費用は、受発注者間の協議を踏まえて技術管理費に積上げ計上される扱いです。監督段階も検査段階も考え方は同じです。ただしこの扱いは発注機関ごとに異なるため、以下は国土交通省の要領を前提とした整理として読んでください。

機器は受注者が手配し、費用は技術管理費に計上される

実施要領(案)では「遠隔臨場に要する動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)やWeb会議システム等は受注者が手配、設置するものとする」とされています。準備の実務は受注者側の仕事です。

費用については「遠隔臨場実施にかかる費用の全額を技術管理費に積上げ計上とする」と定められています。ここでいう費用は、後述するとおり従来の立会・確認費用から追加で必要となる分を指します。検査編でも、遠隔臨場による工事検査にかかる費用は同様に技術管理費へ積上げ計上する扱いです。

見落とせないのが「受発注者間の協議を踏まえ」という条件です。自動的に計上されるという書き方ではないため、どの機器をいくらで手配し通信費をどう見るかは、施工計画書を作る段階で監督職員と話をしておく必要があります。なお、既契約工事に途中から適用する場合、発注者からの要請によるものは設計変更により実施することとされており、契約後の適用でも費用の扱いが決まらないまま進む仕組みにはなっていません。

計上できる費目と、購入した場合の考え方

要領が挙げている対象経費は、撮影機器・モニター機器の賃料(又は損料)、撮影機器の設置費(移設費)、通信費、そしてライセンス代や使用料、通信環境の整備等のその他費用です。

計上の基本はリース賃料ですが、機器を購入した場合の扱いも定められています。購入費に、機器の耐用年数に対する使用期間(日単位)の割合を乗じた分を計上する、という考え方です。つまり購入費が全額そのまま乗るわけではなく、その工事で使った期間に相当する分だけが対象になります。1つの機器を複数の工事で使い回す前提の整理と言えます。

従来の立会費用は共通仮設費に含まれている

もう1つ押さえておきたいのが、従来の立会・確認に要する費用との関係です。要領は「従来の立会・確認に要する費用は、共通仮設費として率計上されているため、遠隔臨場にあたっては、従来の費用から追加で必要となる費用を計上すること」としています。

技術管理費は共通仮設費を構成する費目の1つです。立会に伴う手間はもともと率のなかで見られているので、遠隔臨場の分を重複して計上するのではなく、追加で必要になった分だけを積み上げます。なお要領は「管理費区分は『9:全ての間接費の対象にしない場合』で計上すること」としており、この積上げ分は間接費の算定対象額に含めない扱いです。工事費の階層構造については「土木工事の一般管理費とは?積算で失敗しない正しい理解と計算方法」もあわせてご覧ください。

そしてこれは、発注者側の積算だけの話ではありません。遠隔臨場費が技術管理費に積み上がっている案件では、受注者が応札額を組み立てる際にも、その分を織り込んで予定価格を推定することになります。単価や経費条件の改定を手作業で追い続けるのは、積算担当が1人という体制では負担が大きくなります。土木工事積算システム『Gaia Cloud』(ガイアクラウド)のように、発注者ごとの積算条件を反映できるシステムを活用する方法もあります。

 

発注機関ごとに異なる運用|自社の主要発注者を押さえる

ここまで国土交通省の要領を軸に見てきましたが、実際に適用されるのは発注機関ごとの要領です。ここを取り違えると、準備した内容が使えないということになりかねません。

国土交通省の要領が土台になる

各機関の要領は国土交通省大臣官房技術調査課の要領を土台に整備されているため、定義や基本的な流れは共通しています。動画撮影用カメラとWeb会議システム等を使い、施工計画書に記載して監督職員の確認を受ける骨格は変わりません。ただし細部は機関ごとに調整されているため、国土交通省の要領だけを読んで済ませられるわけではありません。

都道府県・公的機関への広がり

要領の整備は都道府県や公的機関にも広がっています。東京都建設局は「建設現場における遠隔臨場実施要領(案)」で、土木工事のほか建築工事や地質調査委託までを対象に含めています。このほか埼玉県、独立行政法人水資源機構、日本下水道事業団などでも要領が整備されています。

ただし整備の時期も対象範囲も機関ごとに異なり、改定も続いています。自社が応札する発注機関が要領を整備しているかどうか、整備しているならどの版かを確認するところが出発点になります。

発注者ごとに確認しておきたい4点

主要な発注機関について押さえておきたいのは4点です。1つ目は適用の入口。特記仕様書で示されるのか、受発注者間の協議で決めるのかで、受注者側の動き方が変わります。2つ目は対象となる確認行為の範囲。この2つは、要領と特記仕様書を読めば確認できます。

3つ目は費用の扱いです。国土交通省の要領は技術管理費への積上げ計上を定めていますが、同じ考え方がすべての発注機関に当てはまるとは限りません。計上の対象になる経費の範囲や、そもそも計上されるかどうかまで含めて、要領の費用に関する条項を確認しておく必要があります。ここを確かめないまま機器をそろえると、見込んでいた費用が計上されないという事態になりかねません。

4つ目の記録の扱いは、日々の業務量に直結します。確認したいのは、映像・音声データそのものの保存・提出が求められるかどうかと、実施日時や確認対象といった実施記録をどう残すかです。国交省の要領をベースにした運用では、映像・音声を恒常的に保存・提出するのではなく、確認結果を従来の段階確認等資料と同様に管理する考え方が基本です。ただし記録の方法や情報共有システムへの登録の仕方は発注機関ごとに異なります。遠隔臨場やWeb会議の機能を備えたASP型の工事情報共有システムには『BeingCollaboration』(ビーイングコラボレーション)などがあり、確認記録の管理までを同じ環境で扱う方法もあります。

 

遠隔臨場に関するよくある質問(FAQ)

Q. 遠隔臨場の費用は受注者負担ですか?

A. 国土交通省の要領では、機器の手配・設置は受注者が行い、遠隔臨場により追加で必要となる費用は協議を踏まえて技術管理費に積上げ計上される扱いです。従来の立会・確認費用は共通仮設費に率計上されているため、重複ではなく追加分を整理して協議します。ただし費用の扱いは発注機関ごとに異なり、計上の対象や範囲が同じとは限りません。応札前に対象工事の要領と特記仕様書で確認してください。

Q. どの工事・確認行為が遠隔臨場の対象ですか?

A. 監督段階では、土木工事共通仕様書に定める「段階確認」「材料確認」「立会」が対象です。国土交通省の要領では、対象工種がある工事は原則として全ての工事に適用するとされています。ただし通信環境が整わない現場や、遠隔での確認が適さない項目は対象から外されます。

Q. すでに契約している工事でも遠隔臨場を始められますか?

A. 国土交通省の要領では、既契約工事でも実施できる場合があります。発注者が対象工事に合致すると判断した場合は、受注者への要請と回答を経て設計変更により実施されます。合致しないと判断された工事でも、受注者から希望があれば協議のうえ実施できる場合があります。

Q. 遠隔臨場の映像や録画データは提出が必要ですか?

A. 必ずしも録画データの保存・提出が求められるわけではありません。遠隔臨場は映像と音声を用いてリアルタイムに確認を行う仕組みで、確認結果は従来の段階確認等資料と同様に管理されます。ただし保存の要否や情報共有システムへの登録方法は発注機関によって異なるため、要領と特記仕様書を確認してください。

Q. 遠隔臨場を実施する場合、施工計画書には何を書きますか?

A. 実施要領(案)では「適用種別」「使用機器と仕様」「段階確認等の実施」を記載し、監督職員の確認を受けることとされています。記載の考え方や当日の進め方は「遠隔臨場のやり方|施工計画書の記載から当日の段取りまで解説」で詳しく解説しています。

 

まとめ

遠隔臨場は、動画撮影用のカメラとWeb会議システム等を使い、段階確認・材料確認・立会を遠隔地から行う仕組みです。国土交通省の直轄土木工事では令和4年度から本格実施に移り、対象工種がある工事は原則として全ての工事に適用するとされています。令和6年3月には工事検査を対象とした要領も整備されました。

費用については、機器の手配・設置は受注者が行いますが、遠隔臨場により追加で必要となる費用は技術管理費に積上げ計上される扱いです。従来の立会費用は共通仮設費に率計上されているため、重複ではなく追加分を整理して協議することになります。そして要領は発注機関ごとに異なり、適用の入口・対象範囲・記録の扱いに差が出ます。

制度の枠組みが分かったら、次は自社の工事でどう回すかです。施工計画書への記載から当日の段取り、記録の扱いまでは「遠隔臨場のやり方|施工計画書の記載から当日の段取りまで解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。まずは自社がよく応札する発注機関の要領に目を通すところから始めてみてはいかがでしょうか。

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